Wikipedia「Narrative structure」の和訳
少し興味を持ったので、訳しつつ読んでみた。感想としては、分類のセクションはなるほどと思ったが、他の箇所は話がつぎはぎで得るものは少なかったかなという印象。
原文はこちら(2020年6月27日版)。
en.wikipedia.org
注意
- ざっくり和訳なので厳密な訳ではありません。
- とくに専門用語に関しては不自然な和訳をしている可能性があります。
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物語構造 Narrative Structure
物語構造は文学の要素であり、一般には、物語が読者・聞き手・視聴者に提示される際の順序と方法の基礎をなす構造的枠組みとして記述される。物語のテキストの構造は、プロットと背景である。
目次
1. 定義 Definition
物語構造はストーリーとプロット、すなわちストーリーの内容とストーリーを伝えるために使われる形式に関するものである。ストーリーは、時系列順に記述された劇中の出来事を表す。プロットは、ストーリーがどのように伝えられるかを表す。ストーリーは重大な対立や主要な登場人物、背景や出来事を決定するもののことである。プロットはどのように、どの段階で、重大な対立が生じ、そして解消されるかについてである。
2. 説明 Description
第一幕では、すべての主要な登場人物と彼らの基本的な状況が紹介され、最も基本的な人物描写が含まれる。ある問題が導入され、これが物語を推し進めていく。
第二幕は物語の主要部分であり、ある出来事が物事を動かしていく。出来事の結果として、登場人物は人生における大きな変化を経験する。これはキャラクターアーク(訳者注:登場人物の変化のこと?)と呼ばれる。
第三幕では、ストーリーにおける問題が進展し、登場人物はその問題に直面せざるをえなくなる。ストーリーの全ての要素がうまくいき、必然的にエンディングへと向かう。
3. 歴史 History
物語構造の概念は最初に古代ギリシャの哲学者によって記述された。20世紀中期~後期に、ロラン・バルト、ウラジーミル・プロップ、ジョーゼフ・キャンベル、ノースロップ・フライといった構造主義文学研究者らが、すべての人間の物語がある普遍的で深い構造を持っているという議論を試み、その中で物語構造は重要な概念として見直された。ミシェル・フーコーやジャック・デリダなどのポスト構造主義の支持者は、そのように普遍的に共有された深い構造は論理的に不可能であると主張し、この論争の流行は終わった。
『批評の解剖』(Anatomy of Criticism)でノースロップ・フライは彼が春、夏、秋、冬の神話と呼んだものについて広範に取り扱っている。
- 春の神話は喜劇である。悪い状況から幸福な結末へと導くストーリーである。シェークスピアの『十二夜』など。
- 夏の神話は同様に理想郷的ファンタジーである。ダンテの『天国篇』など。
- 秋の神話は、理想的な状況から災難に至るような悲劇である。『ハムレット』、『オセロ』、『リア王』、映画『レジェンド・オブ・フォール』など。
- 冬の神話はディストピアである。ジョージ・オーウェルの『1984』、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』、アイン・ランドの『アンセム』など。
※訳者補足:春の神話(悪⇒良)、夏の神話(良⇒良)、秋の神話(良⇒悪)、冬の神話(悪⇒悪)、ということだろうか?
4. 分類 Categories
物語の多くの形式は、四つの主要なカテゴリのどれかに入る。
- 線形な物語は、最も普遍的な叙述である。ここでは出来事はおおよそ時系列順に表現される。すなわち、出来事は起こった順に説明される。
- 非線形な物語(分裂した物語、分断された物語)では、出来事が時系列とは異なる順序で説明されたり、直接的な因果関係を追わないような方法で説明されたりする。
- インタラクティブな叙述は、読者によって動き出す線形な物語作品のことを指す。
- インタラクティブな物語は、読者が物語に影響を与えるような選択が可能なフィクションの形式のことである。例えば、読者の選択によって、別のプロットや別の結末にたどり着いたりする。
4.1 線形な物語 Linear narrative
回想は線形でない真の物語とよく混同されるが、回想の構造は基本的に線形である。オーソン・ウェルズの『市民ケーン』が一例である。いくつかの映画は結末から始まるが、回想映画はほとんど即座にストーリーの最初に戻り、そこから線形にストーリーが進んでいき、通常は映画の冒頭で見た結末と思われる過去まで進行する。
4.2 非線形な物語 Nonlinear narrative
映画は壊れた物語を通して単なる幻想(訳者注:錯覚?幻影?)を提示することもでき、その有名な例が1994年のパルプフィクションである。この映画は表向きには三つの短いストーリーからなり、これらは時系列的が崩壊した一つのストーリーの三つのセクションをなす。クエンティン・タランティーノは、古典的なフラッシュバックのテクニックを使うことなく、物語を構築したのである。
非線形な物語をもとに映画を制作するというさらなる野心的な試みに、1993年のAlain Resnaisによるフランス映画『Smoking/No Smoking』がある。この映画のプロットには、並行した展開が含まれており、登場人物が異なる選択をした場合のアイデアのもとで進行する。
映画の他には、いくつかの小説も非線形な方法で物語を表現している。Creative writingの教授Jane Alisonは2019年の本『Meander, Spiral, Explode: Design and Pattern in Narrative』のなかで、非線形な物語のパターンとして、螺旋、波、湾曲といったものを説明している。Chitra Banerjee Divakaruniの小説『Before We Visit the Goddess』の章は、出来事は線形な順序ではなく、むしろ特定の文学的手法を実現するような順序で整理されている。これにより、ストーリーをより面白くなるだけでなく、小説の中の登場人物は信用できる一生のタイムラインを持つことになる。
4.3 インタラクティブな叙述 Interactive narration
インタラクティブな叙述の作品では、たった一つの物語が存在するが、ユーザーは物語の次のピースを手に入れるため、あるいは筋が通った物語を組み立てるため、ユーザーは能動的に動かなければならない。
これは現代のビデオゲームに見られるような物語の手法である。プレイヤーは物語を進行させるため、ある目標を達成したり、ある作業を完遂したり、あるパズルを解いたり、あるレベルを終えたりしなければならない。
4.4 インタラクティブな物語 Interactive narrative
インタラクティブな物語は、枝分かれ構造をからなり、始まりの状況から複数の進展や結末に繋がる。そのような全てのゲームの原則は、物語のいずれの段階においても、ユーザーが選択することでストーリーが進展し、それによってまた新たな一連の選択肢が生まれるということである。このように、非線形な物語や会話を書くには、並行する多数の定まらないストーリーの存在を想像する必要がある。
ゲームブックでは、読者はストーリーを続けるためにした選択に基づき、特定のページを開くように指示される。典型的には、選択肢は会話ではなく行動である。例えば、主人公は別の部屋から物音を聞き、ドアを開けて調べるか、または逃げるか、あるいは助けを呼ぶかキメなければならない。この種のインタラクティブな体験は、ビデオゲームや本で可能だが、他の形式の娯楽にはあまり適さない。即興劇は同様に自由だが、もちろん「即興劇を書く」とは言わない。
5 図的な物語
漫画などに見られるシンプルな図的物語には、四つの段階がある。
- 登場人物の紹介と状況の説明
- 問題の導入、予期せぬチャンス、または状況の複雑化
- 一人または複数人の登場人物が問題に対して部分的または完全に対応する形での問題の解消
- 問題への対応によって明白な成功、部分的成功、不成功、不確かな成功が生じる(大団円、結末)
この四つの段階は、物語の複雑化と解決の段階にとって代わる物によって元々の状況がどのように変化したかを示しているのかもしれない(訳者注:この一文は意味がとれなかった)。
単純な物語では、この四つの段階は順に現れる。つまり、出来事は時系列順に説明される。より複雑なストーリーでは、出来事が説明される順序は変化する。実際に、そのようなストーリーは、大団円やその後の現在の状況、複雑化、回想における解決から始まることがある。しかし、これはシンプルな物語の場合とは異なる。
6. 関連項目
- Dramatic structure
- Narratology
- Narreme as the basic unit of narrative structure
- Non-narrative film
- Rising action
- Suspense
- Three-act structure
7. 参考文献・資料
(省略)