[Word] [PowerPoint] 数式入力の方法
WordやPowerPointで数式を入力する方法と、それに関連したいくつかのtipsをまとめた。
環境:Windows 10 + MS Word 2016 + MS PowerPoint 2016
※Macだと話が違うかもしれないのでご注意下さい
目次
Word・PowerPointでの数式入力
Word・PowerPointで数式を入力する場合は、
「挿入」タブ → 「数式」 → 「新しい数式の挿入」
でできる。ショートカットキーはWordとPowerPointで違うので注意。
Wordの場合 Alt + Shift + =
PowerPointの場合 Alt + ;(セミコロン)
ショートカットキーを入力すると、数式モードになり、数式が入力できるようになる。ただし、二つ注意点がある*1。
- 全角のまま数式の入力を始めると、数式モードが解除されてしまう(Word・PowerPoint共通)
- 数式モードにしただけでは、斜体にならない(Wordの場合のみ)
つまり、全角モードの状態から数式入力をする場合
Wordなら
半角/全角キー ⇒ Alt + Shift + = ⇒ Ctrl + I (斜体)
半角/全角キー ⇒ Alt + ;
とキー入力しなければならないということ。これは非常に面倒。
PowerPointの数式挿入はWordより優秀で、数式モードにするだけで自動で斜体にしてくれます。ただ半角に直さないといけないのはWordと同じです。PowerPointではWord文書ほど大量に数式を入力することはないと思いますし、Wordと違って斜体設定もやってくれますから、デフォルトのままでも個人的にはとくに不満は感じていません。
一方でWordの数式挿入は少々厄介です。もちろん数式モードにするときに、毎回半角に直し、斜体(ショートカットキー:Ctlr + I)にすれば良いだけの話ですが、日本語入力から数式モードにするためにWordの場合三回もボタンを押さなければならないのは辛いところです。数式を挿入する回数が少なければあまり気になりませんが、文書中で頻繁に数式を挿入する場合はなかなか面倒です(次のWordは数式のキーボード入力にもう少し優しい仕様にして欲しいです、MSさん)。そこでWordの数式挿入の煩わしさを解消する解決策を考えてみます。
Wordでのショートカットキーの簡略化
Wordで「数式モードに入るのにボタン三回」というのはやはり面倒な問題です。そこで対応策として自力でWordマクロを組んでみることにしました。Wordマクロというのは、Excelマクロと同じようなもので、Word内でVBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語を使ってコマンドを作成することができる機能です。Excelマクロと違って、Wordマクロは非常にマイナーだったので、情報がなかなか見つからなかった記憶があります。自作の拙いコードは次のようなものです。
Sub EquationToggleAndItalic() Application.Run MacroName:="EquationToggle" If Selection.Font.Italic = False Then Selection.ItalicRun End If If Selection.Font.Bold = True Then Selection.BoldRun End If If IMEStatus = vbIMEModeHiragana Then SendKeys "{kanji}" End If End Sub
正直に言って出来はあまりよくないです(変数名もよく分からなかったので、探り探りやっています)。ただ、今のところ自分の環境では問題なく動いています(動作は保証できませんので、使用する際はあくまで自己責任でお願いします)。
使い方は簡単で、このマクロを設定したキーを押すと、
- 数式モードにする(新しい数式を挿入する)
- 全角の場合は半角にする(半角の場合はそのまま)
- 斜体でない場合は斜体にする(斜体の場合はそのまま)
の三つを行ってくれます。ただ、マクロを使用することになるので、文書ファイルを他の人に配布しにくいというデメリットもあります。あくまで自分が文書を作成するときに使う目的にするのが良いと思います。
Wordマクロの読み込みとショートカットキーの登録の仕方はここでは省略します(気が向いたら記事を書くかもしれません)。
数式をキーボードから楽に入力する
数式モードではマウスでクリックしていろいろな記号を挿入できますが、複雑な数式をいちいちマウスで入力するのは面倒です。Wordの数式モードでは、TeXと似たような感覚で入力することができるようになっています。
例えば
\alpha□
と入力すれば(□は半角スペースを表す)、最後の半角スペースを入力したタイミングで
と変換されます。他にも、
x_1^2□/N□
と入力すれば、一つ目の半角スペースで分子が変換され、二つ目の半角スペースで分数に変換され、最終的に
となります。この他のキー入力に関しては、次のページなどに詳しくまとめられています。
hibikanblog.net
sites.google.com
Wordの数式キー入力のTeXとの違い
WordとTeXで入力にほとんど違いはないのですが、一部違うものもあります。次のページに詳しいです。
被るものもありますが、個人的にいくつか気づいたものを挙げておきます(気づき次第また追記します)。
記号
Word | TeX | |
---|---|---|
分数 | / | \frac{}{} |
\ne□ | \neq | |
min, max | min□, max□ | \min, \max |
log | log□ | \log |
いくつかの挙動
TeXでは括弧(()・{}・[])の中に背の高い数式を書いた場合(例えばインラインでない分数など)、括弧の大きさを調節するために
\left(\frac{x}{y} \right)
のように\left・\rightが必要でした(括弧が一重であればとくに気になりませんが、括弧が三重くらいになってくると、少々辛いものがあります)。一方Wordでは、括弧のサイズの調節は自動でやってくれます。括弧のサイズを調整するためには、括弧閉じの後に半角スペースを打つ必要があります。
Wordで式番号を入れる
Wordで式番号を入れる場合、少し工夫がいります。次のページで紹介されている方法を使えば、
- 式番号の挿入
- 式番号の自動
- 式番号の参照
ができるようになります。解説も丁寧で素晴らしいです。
std-experimental-optional.blogspot.jp
以前はWordの表機能を使う方法*2しか知らなかったのですが、こんな良い方法があったんですね。
ドイツ大文字(フラクトゥーア)・筆記体を入力する
数式モード時にデザインタブを探すと、一見ドイツ大文字(フラクトゥーア)はHとIしか用意されていないように見えますが、実は他の文字も用意されています。次のキー入力で使えます。
\frakturA
Aを他のアルファベットに代えることで、他の文字も入力できます。同様に筆記体も
\scriptA
\scripta
で入力できます。花文字に関しては情報が見つけられなかったので、Wordにはなさそう?
さいごに:TeXを検討するとき
WordやPowerPointが使いやすいのは当然ですが、一部の場合に限っては、TeXを使った方がメリットが大きいときもあると感じています。Word vs. TeX論争は現在までにインターネットの各地で繰り広げられていますが*3、私の意見を端的に言えば「Wordの方が楽なときもあるし、TeXの方が楽なときもある」です。
とは言え、基本的には文書の状態を確認しながら作業できるWordの方が使いやすいので、TeXのメリットが大きいかどうかを考え、とくにTeXのメリットが大きくなければWordを選択するのが良いと思います(私自身、両方使い分けています)。TeXのメリットを享受しやすいときは主に次の二つのときではないでしょうか(ここでは特に数式入力に限った話にしています)。
- 数式をたくさん書くとき
- 式番号やその参照が頻繁に必要なとき
数式をたくさん書くと、Wordは重くなります。あまりに数式が多く、新しい数式を挿入するたびにWordが固まるとか、ファイルの上書き保存が数十秒かかるとか、そういった場合にはTeXを使うことを検討してみても良いと思います。また、上でWordで式番号を挿入する方法を紹介しましたが、割とマウス操作が必要になりそうですので、これも頻繁に式番号の挿入や参照を行う場合は煩わしさを感じる部分もあるかもしれません。そういう場合もTeXを使うことを検討してみても良いと思います。
私自身TeXはいろいろ便利な機能があって面白いし好きです。ただ、(個々人の状況にもよりますが)基本的にはWordの方が使い勝手が良い場面が多いのではないかと感じています。私はプログラミングがとくべつ得意というわけではないので、数式をほとんど使わない文書であればTeXではなくWordを使います。数式が少なかったり、式番号が必要ないときもWordを使います。数式が多かったり、式番号が必要なときはTeXを使います。今後(例えば十年くらいの時間スケールで)、Wordの数式入力機能もより充実してくるはずですから(期待も込めて)、この状況も変わっていくと思います。ただ、基本的にはWordとTeXを(どちらがより良いと決めるのではなく)状況に合わせて使い分けていくのが良いのではないかなと思います。
2019/01/24 一部追記。
2020/07/04 全面的な修正。Wordマクロの設定方法を追記。